Ask Riot: フィドルスティックスの音声制作
Ask Riotへようこそ!
ホラーな話を始める前に、ひとつお知らせを。質問の受け付けが再開されました!使い方は簡単、新しい投稿ページでテキストボックスに質問を入力して送るだけです。サイトリニューアルに伴う一時休止にご協力いただきありがとうございました。それでは本題へどうぞ!
今週はスプラッシュアート、アイテムのストーリーテキスト、フィドルスティックスの新音声制作についてお話ししていきます。
フィドルスティックスの新音声、どうやって作ったの?めちゃくちゃ怖いんだけど!
当然ながら、チャンピオンの音声は担当声優さんの魅力的な(今回の場合は背筋も凍るような)演技なしには成立しません。声優さんの素晴らしい演技力が、キャラクターに命を吹き込んでくれるからこそ、音声デザイナーである私はそれをベースにクオリティアップに励めるのです。今回の場合は、死の匂い、不安、圧倒的な異質さを高めることを目指しています。
今回、新生フィドルスティックスの声を担当してくれたのは、プロジェクト初期に実施したオーディションに参加してくれた声優Kellen Goffなのですが、私は一瞬で彼の演技に惚れ込みました。彼が期待通りの幅広く深みのある響きを生み出してくれたおかげで、私はあの独特で背筋も凍るような音声を生み出すべく編集作業に注力することができたのです。Kellenの声だけでも恐怖を具現化したかのような印象があったので、私の仕事はそれらをつなぎ合わせて「死のモザイク画」を完成させるだけだったとも言えます。
Kellenの演技は下の動画でもご覧いただけます(動画は英語になっており、不気味な声の演技は3:40辺り)。
そもそも新生フィドルスティックスの声は、その不気味な姿を音で表すようなものにする以外にないだろうと確信していました。乾いていて、カタつきがあり、近くにいるのに姿が見えない邪悪な存在、人っぽさは最小限、前触れもなく突然襲いかかってくる…そういった声です。これを実現するため私は様々なエフェクトを試し、最終的にはニュアンスを強調するエフェクト、邪悪な言葉を強調する際に音声を重ねて響かせるエフェクト、「闇、冷酷さ、残虐性」を表現するリバーブ、動物/昆虫的な響きを持たせるエフェクトなどを織り込んでいきました。またフィドルスティックスの声では、「人間が発声に使う器官(唇や肺など)を使っていないように響かせること」が非常に重要だったので、しっとりとした音や野性的な響きは避ける必要がありました。フィドルスティックスは死を連想させる怪物であり、言葉など解せず狩りの衝動で動く存在ですから、そんな声を出させるわけにはいかなかったのです。
- Riot Zimerfly、音声ディレクター
各アイテムのストーリーテキストは今後あったりするのでしょうか。他の人はどうなのか分かりませんが、私個人は「ラバドン・デスキャップ」や「リッチベイン」など、アイテムにまつわるルーンテラのショートストーリーがぜひ読みたいです。
10年という歳月の中で、ゲーム内に散りばめられてきた「物語のかけら」たち。これをリーグ・オブ・レジェンドの大きな魅力だと感じている人は少なくありません。もちろん、凡庸な設定のアイテムも存在しますが、それ以外のアイテムからは「しっかりとした物語をよこせ」と切望する声が聞こえるようにも感じています。
ただ、剣や鎧、魔法の宝石を主役に面白い物語を書くのはなかなか難しいものです(もちろん不可能ではありませんが)。一般論ですが、武器は物語の主役になり得ません…残存するダーキン5体の一つなら話は別ですが。ただ優れたキャラクターが登場する物語にそういった「遺物」を登場させるなら…?それは私もぜひ読みたいものです。「ドラン」とかいう人物が何者なのか、私も非常に興味がありますから。
また、「ロストチャプター」、「女神の涙」、そして我らが「ルインドキング・ブレード」などについては非常に面白い考察がいくつか存在しています。こういったアイテムについては、おそらくそう遠くない未来にもっと踏み込んだ物語をお届けできると思います。
- Riot Scathlocke、ナラティブエディトリアルディレクター
ゲーム内3Dモデルがスプラッシュアートと違う時があるのはなぜ?たとえば「混沌の闇アフェリオス」は、スプラッシュアートでは黒と赤なのに3Dモデルは青が多めになっています。「ブラッドムーン エイトロックス」などが、ゲームプレイの視認性を高めるために彩度を上げているのは分かりますが、それ以外のスキンはどういう理由で差異があるんですか?
スプラッシュアートとゲーム内3Dモデルには当然強い関連性がありますが、両者の目標は異なります。ゲーム内3Dモデルの場合、最大の目標はゲームプレイの視認性を高めることです。一方でスプラッシュアートではこの点を考慮する必要がないため、深い没入感、そして私たちが「映画的説得力」と呼ぶ要素を最大化することを目標として制作されます。この点は、コミックのキャラクターが大作映画化される時と比較すると分かりやすいかもしれません。映画バージョンでは、「コスチューム、素材、描写」にリアルさが求められ、時には他のバージョンには存在しないディテールを新規追加することもあります。照明についても、シーンの情景や設定によってメリハリや雰囲気を強調することがあるでしょう。スプラッシュアートでは私たちもカメラの歪みやレンズフレア、宙を舞うチリ、フィルムグレインまで活用しています。これらの要素を重ね合わせることにより、他の手法では達成し得ない「説得力」と「映画的な表現」を実現しているわけです。
しかしこういった雰囲気や照明の効果は、時にゲーム内3Dモデルのテクスチャで再現しきれません。たとえば「混沌の闇アフェリオス」のスプラッシュアート。このイラストにはクールかつダークな演出が施されていますが、これは他の色(ジャケットの飾り房の鮮やかな赤色など)を際立たせる効果を果たしています。とはいえ、私たちもスプラッシュアートがゲーム内で実際に目にするモデルとまったくの別物に見えてしまう事態は避けたいと考えているので、開発段階ではスプラッシュアートと3Dモデルを比較する時間も設けており、場合によっては3Dモデルにスプラッシュアートのポーズを取らせて比較することもあります。
端的にまとめると、スプラッシュアートと3Dモデルは異なる目標を目指して制作されるものですが、同時にできる限り両者の見た目を近づける努力をしている、というのが現在私たちの取っているアプローチとなります。
- Riot Owleycat、イラストレーションアートリード