/dev: ドクター・ムンドのVGU、始動
先日のチャンピオンロードマップで言及したとおり、次回のVGUは2021年、ドクター・ムンドが対象です。そして複数回にわたり進捗情報を共有してきたフィドルスティックスとボリベアのVGUプロジェクトと同様、ムンドについても逐一進捗をお届けしていきたいと考えています。早い段階からVGUの方向性や計画を共有することで、今回も多くのフィードバックをいただき、高評価の点や改善点を確認できることを願っています。現在まで、この手法はお寄せいただいたフィードバックの内容と、皆さんからの反応の両面で非常に上手く機能してきました。そこで今回もムンドのVGU最新情報をお届けしていきたいと思います。
では最初に、ドクター・ムンドを次のVGU対象に選んだ理由とチームの目標について説明していきましょう。
率直に申し上げて、VGUの決め手になった主要な理由のひとつは、ムンドのビジュアルがかなり古臭くなってしまった点にありました。現在のチャンピオンたちと並べた時、ムンドは場違いなほどに浮いてしまっていたのです。そしてチームはドクター・ムンドのビジュアルとテーマに大幅な改善の余地があると確信していました。ただ見た目を綺麗にするだけでなく、この数年でLoLのビジュアルスタイルが遂げてきた進化に合致するビジュアルを作れると考えたのです。
またゲームプレイ(彼のスキルセット)についても同様に改善の余地があると考えていました。もちろん現在のスキルセットでも有効に機能している点は多数あります。超回復によるタンク性能やクリーバーを繰り返し投げてダメージを与えられる点などはその顕著な例で、この2点についてはアップデート後も何らかの形で残ることになるでしょう。
この他、ゲームプレイ面では「極めてシンプルなチャンピオン」という特徴を変えないという目標も掲げています。新スキルセットにはやり込むことで上達する「深み」を持たせるつもりではありますが、いきなりとんでもない反射神経が求められるようなタイプの「深み」にはしませんので、スキルセットの複雑さは現在と同程度になると思ってもらって大丈夫です。
以上がVGUの目標です。ここから先はドクター・ムンドのリードゲームプレイデザイナー、コンセプトアーティスト、ゲームプレイナラティブライターの3名にこれまでの活動内容を紹介してもらうとしましょう。
キルとムンドと医師免許
Glenn “Twin Enso” Anderson - ゲームプレイデザイナー:
全火力を敵のドクター・ムンドに集中しているのに、何食わぬ顔で突進を続けて味方キャリーをキルし、突入時よりも体力を回復した状態で歩き去っていく…。LoLプレイヤーならば誰でも一度は(あるいは何度も)経験したことがあるシチュエーションではないでしょうか。凄まじいタンク性能と自己回復力がドクター・ムンドの個性の中核であることは間違いありません。プレイしていると「ダメージについては他のチャンピオンの問題だ」というような感覚すら湧いてくるのがドクター・ムンドというチャンピオンです。そこでVGUプロジェクト初期には、この感覚をさらに増幅する方法を色々と模索していきました。
当時目標としていた点は3つ。1つ目はドクター・ムンドと対峙するプレイヤーが取れる対策の幅を増やすこと。2つ目はクリーバーを当てる以外にゲームプレイ要素を広げること。3つ目はドクター・ムンドの総合的なシンプルさを犠牲にすることなく、現代LoLの水準へ引き上げること。スキルセットの方向性はまだ確定していませんが、以下ではその一例として思索案をいくつか紹介してみたいと思います。
最初に試した案は「攻撃を受けるたびに最大体力を1増やす」というものでした。その後も「攻撃を受けることで最大体力を増やす」方向性で色々と試してみましたが、何度かテストを実施した結果、この案は悪い意思決定に対して報酬を与えすぎると容易に判断できました。具体的には、プレイヤーが深追いしすぎたり、意図的に不利な位置取りをしたり、積極的に不利なダメージ交換をしかけたりする行為を促してしまっていたのです。そこで方向性を少し切り替え、ムンドが防御ステータスと引き換えに――はい、ご想像のとおりです――最大体力を得る効果にしてみました。
すると…アイテムをいくつか完成させた段階で体力バーはとんでもない状態になりました。
しかし体力がありえないほど上昇した一方で、ムンド対策として有効なチャンピオンやアイテムの効果は大幅に上昇し、逆にムンドと相性の悪い対象の状況は更に悪化しました。これでは現行のドクター・ムンドよりもさらに両極端な状況を生み出してしまうため、私たちは最終的にこの方向性を諦めることとしました。
それから上の画像の赤線について少しだけ説明させてください。これはエルダードラゴンバフの確定キルラインではありません。実はゲームデザインチームでは、ドクター・ムンドの体力自動回復効果を常時高くする案も試していたのですが、一部のダメージはこのムンドの最大体力を減少させてしまうようでした。この赤線はムンドの「現在の」最大体力で、デス後やリコール時にもここまでしか回復しません。しかしこれでは「自動回復し続ける」という設計意図と矛盾しており、プレイヤーはポークでダメージを受けた時に「守られた」とは感じず「不利を被った」と感じてしまいますし、マゾヒスティックなタンクという彼の個性に沿った姿でもなくなってしまいます。またこの状態では交戦やリコールのタイミング、あるいは体力管理においてストレスや混乱を生むことになってしまいます。いずれにせよムンドの頭脳には処理しきれない情報量になってしまうため、チームは総合的判断によりもっとシンプルなスキルセットを模索することにしました。
超強力な体力自動回復以外には、ゾウンが生んだ狂人ミュータントらしさを表す方法も模索しています。案はいくつかありましたが(医療行為とは呼び難い包埋手術風の攻撃や刺さったクリーバーを引っこ抜く攻撃など)、テスト回数が一番多かったのは死体の連鎖爆破攻撃でした。
このスキルは使っていて面白かったのですが、スキルの性質がゾーニング向きでしたし、謎の注射器が刺さった近接トップレーナーのスキルとしてはメイジ感が強すぎました。ムンドにこれ以上接近しなくても戦える手段を与えるのは彼の設定的にもビジュアル的にも相応しくないですし、新生ムンドにそういうゲームプレイを推奨するのはチームの意図するところでもありませんでした。
というわけで、プロジェクトはまだまだひたすらにクレイジーで実験的な段階、つまり極めてムンド的な段階にあります。ここまでに紹介した模索案はいずれもしっくりくるものではありませんでしたが、チームは引き続き、我らがムキムキ紫色ドクターをLoL屈指のスーパータンクとするべく取り組んでいきます。今回はこのような形で最初期の模索案を紹介できて、チーム一同大変嬉しく思っています。ムンドのゲームプレイがここからどのような発展を遂げるのかぜひ楽しみにしていてください。おそらく我らがチームは、その過程で医学について深い知識と洞察を得られることでしょう…。
クリーバーを全方向に投げ続けて
Sunny “KindleJack” Pandita - コンセプトアーティスト:
実はフィドルスティックスと同じく、ドクター・ムンドも私がLoLで恋に落ちたチャンピオンの1体です(流れが…来ている!)。一切を気にせず敵陣を突き進み、敵キャリーが助けを求めて泣き叫ぶのを見るあの感覚は唯一無二のものです。
コンセプトアートに着手した当初、私は方向性を絞ることなく模索を続けました。ゾウンの深部まで降りていき、「ムンドとは何者か」、「ムンドとは何者になり得るのか」と自らに問い続けたのです。まだ質問の答えを探る段階ではないので、ただただ問い続ける。私がこの仕事で一番好きな時間です。あてもなくアイデアを出していくので非現実的な案もたくさん出てきますが、時にはそういった案の中から未来につながるインスピレーションの光が生じることもあります。
突き詰めていくと、ビジュアル面でムンドの柱となる要素はあまりにも明確でした。「ドクター」であること…そして「ムンド」であることです。「ドクター」という側面は様々な解釈が可能で、絶対に改善につながるポイントでしたから、私もワクワクしました。しかし「ムンド」のほうは…とにかく「ムンド感」の多寡でしか測ることができません。ムンドを言葉で説明することはできないという人もいれば、ひたすらに純粋な紫色だと言う人もいます。しかし私にとってのムンドは「意識がきちんと存在するのかも怪しい不倒の超再生マッドマン」でした。
目指すべき印象については議論が尽きませんでした。ムンドは恐ろしい連続殺人犯だ、憎めないおバカさんだ、といった意見の他に、結構ハンサムだという意見まであったほどです。おそらくこのプロジェクトでは、彼の持つコメディー性と危険性のバランス取りが重要になってくるでしょう。大変な旅路になりそうですが、相手はムンドですから、きっとデザインも「好きなところへ行って」くれることでしょう。
ドクター?ムンド
John “JohnODyin” O’Bryan - ナラティブライター:
ムンドのリワークプロジェクトは、始まり方からして個性的でした。そもそもリワーク対象になる古いチャンピオンは大抵の場合ひどい状態で、抜本的な変更を余儀なくされることが多いのです。しかしムンドのプロジェクトでは、初日にチーム全員の意見が「ムンド良いよね」で揃ってしまいました(世界中から賛同する声が聞こえてきそうです)。もちろん改善の余地が無いわけではありませんが(特にビジュアル面)、会議室に集まった全員がチャンピオンラインナップでムンドは独自の役割を果たしており、それをむざむざ捨てたくないと感じていたわけです。実際のところ、誰にも止められず、誰にも傷つけられない狂人、おまけに「ドクター」という特徴まで揃ったムンドは凄まじい埋蔵量を誇る金鉱脈のような存在です。
そうなると次に取り組むべき疑問は「不倒の狂人ドクター」という物語を活かしつつ、今以上に改善するには何をすればいいのか?」というものになります。
そこで私は、さらに質問を投げかけました。「我々はムンドの知性をどこまで低くしたいのか?」と。本当にドクター(医学博士)にして、自ら被験者となった投薬実験のせいで正気を失ったという物語も考えましたが、これではマッドサイエンティストという性質がシンジドと丸かぶりしてしまいます。
そこでチームは、試験的に「ドクター」という要素をいったん忘れ、一人の男としてムンドを掘り下げることにしました。ただし自分がドクターだと思い込んでいて、本当は違うことに気づけないくらいクレイジーな男としてですが。LoLはクレイジーなチャンピオンには事欠きません。たとえばジグス、ジンクス、クレッド…しかしその中に正真正銘のおバカがどれだけいるでしょうか?唯一の候補はトランドルでしょうけれど、その彼ですらトロールとしては切れ者の部類です。そうして私たちは、この「おバカさん」という点こそが、自分の体に何が起きているのかまったく理解できていないであろう男にピッタリだと思い至ります。
ムンドが最終的にどういう方向へ進むことになるかはまだ分かりません。しかし、彼に秘められたポテンシャルを掘り下げていくのは本当に楽しい仕事だったことは間違いありません。
次のステップは?
ドクター・ムンドのリリースは2021年予定なので、今年の年末までに本制作へ移行する予定です。次回の開発ブログはそのタイミングで投稿することになるでしょう。
今回のVGUでもこれまで同様、皆さんのご意見を心からお待ちしています。ワクワクする点、恐ろしい点、彼が紫色の医師として史上最高にハンサムな理由など、あなたの声をぜひお聞かせください。すべてのご意見やフィードバックは、最高のムンドをお届けするための資料とさせていただきます。