/dev:"刺さる"スカーナーを求めて

スカーナーのリワーク最新情報。ナラティブ、アート、ゲームプレイの進捗をお知らせします。

皆さんどうも、Lexi “Riot Lexical” Gaoです。今回もチャンピオンチームのメンバーと一緒にスカーナーVGUの最新情報をお届けしていきます!前回の進捗報告では、スカーナーの新ビジュアルの多様な検討案をお見せしましたが、今回はビジュアル以外にも色々と紹介していきます。本記事ではまずチャンピオンラインナップにおけるスカーナーの役割を紐解き、リワークの目標を確認し、最後に開発プロセスを紹介していきます。ではスカーナーがカサカサと岩陰に隠れてしまう前に始めましょうか。

スカーナーがVGU候補に挙がるようになってからずいぶん長い時間が経ちました。昨年のVGU投票で勝ったのもしばらく前のことですね。ちなみに今回のリワークは難易度が高く、大規模になることは最初から分かっていましたが、着手してみるとその難しさは想像以上でした。

実はスカーナーは、"チャンピオンテーマを気に入っているか?"というプレイヤー調査の評価スコアが最低クラスでした。しかし一方で、開発チームはプレイヤーの多くが物語や行動原理をもっとよく知りたいと感じていることも把握していました。

ご存知でしたか:スカーナーは以下のカテゴリーで最下位でした:

ビジュアルの魅力

私のお気に入りのチャンピオンだ

このチャンピオンならではのスタイルが好きだ

ビジュアルと性質が一致している

性質・性格が明確に分かる


ワースト4のカテゴリー:

感情を揺さぶられる

強さの源のイメージが好き

物語に一貫性がある

主役か脇役か(低順位は脇役を示す)

テーマ全体への関心度


ですが驚くべきことに、スカーナーの"背景ストーリーの認知度"の順位は最下位クラスではありません。つまり"スカーナーが何者か知らない"から人気がないわけではないのです。…ちなみにスカーナーは"このチャンピオンと恋愛したい"カテゴリーのワースト4にも入っていません。それでは次の項へ進みましょう。

一方、スカーナーの総合的な人気は全地域・全チャンピオン中最下位と、幅と深さの両方で圧倒的です。スカーナーはプレイヤー調査を実施したすべての地域でひときわ人気がなかったわけです。

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そこでデータを詳細に分析してみたところ、不人気度に関係しそうな潜在的要因がいくつか見つかりました:

  • モンスターの(不)人気度:一般的に、モンスターチャンピオンは人型チャンピオンと比較すると人気がありません。これは世界的に共通しています。
  • サソリの(非)英雄感:プレイヤーにチャンピオンの名前を聞いて思い浮かべる特徴を聞くと、通常は対象チャンピオンのアイデンティティーに由来する頻出単語の傾向が見えてきます(ワードクラウド)。そして人気上位のチャンピオンの場合は、ゲームプレイ上の特徴とチャンピオンテーマの特徴が一定割合で出てきます。一方でスカーナーの場合、大多数(90%)がゲームプレイ関連の特徴を挙げており、そのほぼ全てがアルティメットスキル「インペイル」に関連するものでした。また、ゲームプレイ以外の特徴は「サソリ」というものだけでした。人気チャンピオンならば多様かつ独自性のある特徴が挙げられるため、その差は歴然でした。
  • 水晶というテーマの(非)マッチ度:相反するように見えるテーマ同士でも、ゲームプレイへの落とし込み方が良ければ相乗効果を発揮し、高い独自性と面白みを生み出すことがあります。しかし時には、たとえゲームプレイに上手く落とし込めても、純粋にテーマ同士がマッチしないということもあります。そういった場合はチャンピオンが"変わり種"と見なされ、ごく一部の限られた人にのみ深く愛されるようになります。水晶の一般的な印象は美しい、魔法的、穏やかといったところでしょう。一方、サソリの印象は、強い、猛毒、凶悪などです。

これらの情報もあり、開発チームは最初からスカーナーのリワークがかなり大規模になると睨んでいました。今抱えている問題を修正するだけでなく、"同じ落とし穴に落ちない"対処も必要だったためです。もちろんスカーナーがサソリ型モンスターであることはリワークでも変わりません。私たちはモンスターチャンピオンの不人気傾向に抗うのではなく、逆に少数ながら情熱的なモンスター愛好プレイヤーに深く愛してもらえるよう、モンスターらしさを強化することにしました。

これはスカーナーを知能の低いモンスターにするという話ではありません。スカーナーは知性が高く、感情を有しており、物語ではある種の高貴さも漂わせています。これは他のモンスターチャンピオンとの大きな違いです。

そこで開発チームはスカーナーに適合する"強力なモンスター"のアーキタイプ(典型、ある種のパターン)を探しつつ、コアとなる部分も考え続けていきました。そしてルーンテラの地域を一つひとつ見て、サソリ型モンスターが生息する合理性のある環境を探し、最終的にチームの全員が深く納得する地域にたどり着きます。シュリーマの東側国境、謎と密林に包まれ、エレメント魔法で繁栄を続ける国"イシュタル"です。

ではここからはRiot apothecarieと交代し、ナラティブの詳細を語ってもらいましょう。

ブラカーンの新たな故郷

Elyse “Riot apothecarie” Lemoine - ナラティブライター

スカーナーは私にとって2回めのVGUで、今はこれ以上ないくらいワクワクしています!ウディアのVGUで精霊の守護者スキンに携われたのも忘れがたい経験でしたが、今回のスカーナーも腕が鳴ります。

スカーナーのナラティブでは、まずアートの方向性も含めて"彼が何者になり得るのか"を模索していきました。

ブラカーン

スカーナーのアップデートでは"ブラカーン"という存在に再びフォーカスを当て、彼らの強さとルーンテラにおける存在感は残したままで、種族のあり方だけを再構築したいと考えていました。

その結果たどり着いたのが、"ブラカーンは有史以前に出現したルーンテラ初の土のエレメンタリストだった"という設定です。強力な古の存在。世界の根本的な知識を持つ畏敬の対象。太古の昔、ルーンテラの人々のその知識を教えていた存在。

しかしこの案を進めるためには、ひとつ負担が増えることとなりました。開発チームはスカーナーとブラカーンの抱える短所を埋め、ルーンテラにおける存在感を確立することを目指してプロジェクトを進めてきましたが、ブラカーンはルーンテラ内の一部地域/チャンピオンと深く結びついている存在であるため、ルーンテラユニバースを担当するチームとの連携が必要になったのです。

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シュリーマからイシュタルへ

現在スカーナーはシュリーマ在住ですが、ブラカーンの新たな生息地はエレメントの魔法と深く結びついたイシュタルの地が最適だろうと考えていました。

そしてブラカーンがルーンテラ初の土のエレメンタリストだったとするならば、彼らがイシュタル人に土のエレメントの扱い方を教え、史上初のアーコロジー(高い人口密度を持つ自律的な自己完結型都市)を生み出す契機となった可能性もあるでしょう。それならば、ブラカーンはイシュタルにおける畏敬の対象で、地域の起源や歴史にも深く結びついた存在になるはずです。

ただ現代のブラカーンは人間の営みに一切関心がなく、イシュタルとも距離を置いています。これはスカーナーの物語を展開させていくには絶好の状況です。今後イシュタル全体の物語はスカーナーを中心に展開していくことになるでしょう。

テーマを探る

Larry “The BravoRay” Ray - アートディレクター

アートディレクションではまずスカーナーを基本要素単位まで分解し、次の視覚的特徴に合わせて描いてきました。

  • サソリ
  • クリスタル
  • 善良な英雄的アーキタイプ

次のステップではこの3要素に基づいて機能している要素としていない要素を切り分けました。サソリ自体はクリーチャーのイメージとして優れた題材ですが、ここにクリスタル要素を足すことはスカーナーのテーマにとって良いことでしょうか?あるいは悪いこと?スカーナーは"孤独で、打ちひしがれ、同族を懐かしむ悲しきサソリ"というコンセプトを中心としたキャラクターですが、そこにデザイン的に引き込まれるような魅力はありません。組み合わせられた要素同士が喧嘩をして、全体としての魅力を下げているのです。そこで私たちは、まず各要素のイメージを個別に掘り下げ、他の要素を(損ねるのではなく)高めている要因を探りました。

サソリ:モンスター系チャンピオンに適した良いデザインです。昆虫的であり、甲殻類的でもある。また近づいて見てみると別世界の生物/エイリアンのようでもあります。

クリスタル:昆虫とクリスタルの組み合わせは、理論上は機能するはずですが、チームでは今回のVGUでクリスタルを別素材へ進化させることにしました(残すには問題が多く、違和感も拭いきれないと考えました)。またルーンテラはスカーナーがリリースされた当時から大きく進化を遂げているので、その当時に決めた印象/ワクワク感の薄いテーマに固執することは、リワークの方向性としても筋が悪いように感じられました。

善良な英雄的アーキタイプ:スカーナーは秩序・中庸アーキタイプに属するキャラクターで、完全な感受性と深い知性を備えています。これは他のモンスターチャンピオンとは一線を画す特徴です。目に入るすべてを狩るようなモンスターではないのです。目指したのは、一人にしておいて欲しいと願うが、縄張りを守るためならばその絶大な力を振るう"キングコング"的な雰囲気です。スカーナーは見境なく敵対的な態度を取るような性格ではありませんが、いざ戦いになれば誰かに引けを取ることはありません。そんなスカーナーがイシュタルの民から"大地の一部"、"守護者"として尊敬・崇拝されるという案はチーム一同が気に入りました。

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私たちが最終的に下した判断は、善良・秩序というアーキタイプとサソリのイメージを強化し、クリスタルのテーマは完全に削除する、というものでした。この判断はルーンテラユニバースにおけるスカーナーの"力の源"表現を幅広く検討する余地を作り出してくれました(ヴォイドスポーン、ヘクステック駆動など)。なお"力の源"については、開発の全プロセスにおいてクリエイティブを発揮する余地が特に大きいだろうと判断し、"エレメントの魔法"としています。

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甲殻類の分厚い外殻、サソリの尾、そして獲物を捕らえる三叉の針は、敵の視点では分厚い装甲と凄まじい力を持った怪物に見えることでしょう。

サソリにまつわる問題

Jacob “Riot Llama” Crouch - ゲームデザイナー

スカーナーのリワークは本当に難題でした。

これまでのリワークでは必ず、改良の下地となる、強く共鳴し合うテーマが存在していました。イレリアなら"思念で剣を操るダンサー"、ガリオなら"反魔法特性を持つ石でできたガーゴイル巨人”、フィドルスティックスなら"不気味なカカシ"といった具合です。しかしスカーナーの"孤独な水晶のサソリ"というテーマは…あまりワクワクする類のものではありません。そこで私たちはまず、別のテーマを見つけるか、現在のテーマを深めてイメージ全体を改善することにしました。最終的には皆が気に入る案が見つかりましたが、そこに至るまでにはボツ案も多数ありました。せっかくの機会なので、以下に4つのボツ案を紹介しましょう。

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毒:スキルセットにサソリという特性を組み込み、ダメージをすべて継続ダメージ(DoT)にするという案。独自性は素晴らしかったものの、問題が2つあった。

  • LoLの体力バーで大量の継続ダメージを表現するにはUIの制限がある。
  • 継続ダメージの合計が致死量に達した時、対象は何ができる?対象がデスを回避するためのゲームプレイが必要だが、LoLには有効な選択肢が少ない。

この2点についてはいつか別のチャンピオンで改めて取り組みたいと考えていますが、今回のスカーナーでは扱わないことにしました。

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ヘクステック:"ヘクステッククリスタルのゲームプレイとは?"という問いをチャンピオンのスキルセットで表現する試み。ヘクステックの残量によってアクティブ/非アクティブフェーズがスピーディーに切り替わっていく爆発的なゲームプレイとなった。

最大の問題は、ゲームプレイがスカーナーらしくないように感じられたこと。高い知性の存在とキラキラとしたビジュアルは(旧版の)物語とも一致するが、プレイヤーがスカーナーの核と感じているものと実際のゲームプレイの乖離が大きかった。

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子スカーナー:試合の流れの中で"ブラカーン種族の復活"を経験できるスキルセット案。何らかのゲームプレイ要素を用意し、スカーナーが「インペイル」(ULT)でサモナーズリフト中に散り散りになっている小さく弱いブラカーンの赤子を集められるようにする。この案は感情面に響く側面があったものの、ゲームプレイへの落とし込みが十分なレベルに達することがなく、スキルセットの満足感が低かった。また、"可愛いフォロワーがいる"という特徴は開発中だった他のチャンピオンたち(ミリオなど)と競合する上、他チャンピオンのほうが上手くゲームプレイに落とし込めていた。

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甲皮:脱皮することで外骨格を強化する案。ゲームプレイ体験としては大変良かったが、いくつか問題も生じた。

  • "プレイヤーが複数の姿から脱皮後の姿を選び、それによってゲームプレイが根本的に変化する"という案は特にクールだったが、同じコンセプトで新チャンピオンを開発する時ほどの規模では実現できなかった。
  • スカーナーは既存スキンが多数存在しており、ベーススキンに複数の形態を作ることは将来的な開発の負担だけでなく既存スキンの改修負担も大幅に引き上げてしまう。
  • "適応と成長"ゲームプレイ(例:チョ=ガス)はヴォイドモンスターによく採用される要素。スカーナーと彼らは差別化する必要があった。

以上、ボツ案の紹介でした。ここから先は上手くいったほうの案を見てみましょう!

スカーナーのテーマは最終的に“畏敬の対象/威風堂々とした守護神"に落ち着きました。新しい彼は自分の守護する土地を守るためならば一切躊躇しない存在です。サモナーズリフトで侵入者を追い詰め、ちぎり飛ばす姿にご期待ください。スキルのひとつには相手を掴んで引きずっていくものがありますが、これは旧ULT「インペイル」の特徴そのままです。なんという偶然でしょう!

しかし旧「インペイル」は非常に強力である反面、使った時の満足感には欠けるところがあったため、リワークではその点にも対処しています。新たなスキルは"敵単体をピックする手段"ではなく"チームファイト"志向となっており、使用時の興奮とプレイメイク能力も上昇しています。言い換えると…「インペイル」は範囲スキルになります。

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これにより敵単体を狙う時の信頼性はやや低下しますが(効果時間短縮、要詠唱、対象クリック指定不可)、複数の敵を巻き込めるようになったことでチームファイトのイニシエート手段として大きな脅威となるでしょう。またこの変更は、いつ・誰を・何人巻き込むかという戦略性も深めます。

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それ以外のスキルは「インペイル」を狙う戦略的な位置取りを支援し、「インペイル」発動中にできることを増やす内容になっています。各スキルを皆さんに紹介する日が今から楽しみです。それでは今回はこれで。サソリファンの皆さん、さようなら。

それではまた次回

スカーナーの進捗についてかなり長い間お知らせできなかったことを、最後に改めてお詫びします。今回の記事で我らが水晶サソリの新たな姿と方向性がしっかりと伝わり、また気に入ってもらえていれば幸いです。

また今後数ヶ月のあいだは、お知らせできる情報が揃いしだい定期的に進捗を発信していきますので、楽しみにしていてくださいね。それではまた!