/dev: ウディアの最終「型」を作り込む
どうも、Ryan
“Reav3”
Mirelesです。今年リリースとなるウディアVGUの最新情報をお届けします。プロジェクトは前回の進捗報告後にプロダクション段階へ移行したため、今回の報告ではゲーム内でのビジュアルを中心に紹介していきます。それではまず…このVGUの目標について軽く振り返ってみましょう!
- 「型を変えて戦う」点と近接通常攻撃に特化したスタイルはウディアのアイデンティティだと考え、維持します。ここがウディアと他のチャンピオンたちとの最大の差別化要因ですからね!ゲームプレイ面は現在のLoLに求められる水準まで高めることが目標で、型と通常攻撃パターンで個性を出し、深みを持たせていきます。また並行して、ウディアの活躍する瞬間を誰でも視覚的に認識できるようにする改善も進めます(現在のウディアにはそういった側面がほぼ存在しないため)。
- ビジュアル面ではシャーマン戦士というテーマを崩すことなく、ウディアのビジュアルを現在のLoLの水準までアップグレードすることを目指します。目標はあくまでもウディアのビジュアルを「改修」することであり、再発明することではありません。
- ナラティブ面では、昨今の物語で描かれている印象をゲーム内にも反映し、フレヨルドとの強い繋がりを表現するつもりです。
それから2022年のチャンピオン動画をご覧になっていない方のために改めて。例の枝角はキャンセルになりました。多くの方から不評だったと理解しつつ、実際に枝角ありのモデルをゲームに組み込んでみたのですが、枝角がなくとも独自性のあるシルエットは作れると確信を得られたので、晴れてお役御免です。
それでは振り返りはこのくらいにして、新情報にいきましょう!
枝角はアリかナシか?
Jason “OOYOO” Namgung - キャラクターアーティスト
ずっとリワークが待ち望まれていたウディア。LoL世界で長い年月に耐えてきた彼の再生に携われると分かった時は本当に嬉しかったです。
プロジェクト参加直後に僕が持っていたウディアのイメージは比較的シンプルで分かりやすいチャンピオンというものでしたが…そのイメージは一瞬で粉々になりました。
最初の仕事はビジュアルとゲームプレイを試すためのプロキシ(代用、Proxy)モデルを組むことだったのですが、それには基礎となる体の各部位のサイズ比率を正しく作る必要がありました。比率の崩れたモデルを改良していくなんて、ゴミを磨くようなものですからね。当初の目標だった「巨躯で力強い山男」は、その後も理想イメージを目指す上で私たちの北極星となっています。
やがて各部位のサイズ比率を突き詰めていく上で、私たちは枝角を削除するという判断にたどり着きました。チームは枝角のアイデアを本当に気に入っていて、うまくハマるデザインを求めて無数の案を試したのですが、元々の体格ががっしりしているために何をしても不格好にしかならなかったのです。
ある案では羽根のように見え、別の案ではプロペラに見える…といった具合です。どれだけ工夫をこらしても、どこか浮いた存在に見えてしまう。結局、ウディアは動物精霊の男であり、枝角の男ではなかったということなんでしょう。こうして私たちは枝角を捨て去り、動物精霊の側面に改めて集中していきました。
そして基礎となる体ができた後は、新たな型の試行錯誤をスタート。ここで私たちは、この山男は想像以上に複雑だぞと思い知らされることになります。
体型自体はとてもシンプルで分かりやすいのですが、4つの型というのが本当に曲者でした。4種類あるだけでも大変なのに、さらに各型は対象の動物精霊のイメージを増幅するものでなくてはいけません。
リソース制作のときはできる限り再利用できるものを作るように心がけています。この方針は新チャンピオンの開発に役立つだけでなく、スキンの開発や将来的なアップデートも容易にしてくれます。今回もウディアの各モデルで同じ「ボーン」を使用することで構造をシンプルに保ち、プレイヤーにとっての視認性も担保しています。
しかしこの方針で納得のいくモデルを作るには、凄まじい回数のイテレーション(試行錯誤)が必要です。時には素直に完成することもありますが、イテレーションを10回以上も回す場合もあります。
…でもまあ、これがゲーム開発の楽しさなんですよね!
ウディアのプロダクションは始まったばかりで、まだ何もかもが開発中の状態ですが、我らが大男のビジュアルは少しずつ最終形に近づいてきていますよ。リリース後、皆さんに楽しんでプレイしてもらえることを願っています!
ウディアが操る無数の型を極める
Koingyeal “Koing” Jang - アニメーター
LoLではゲームプレイの「視認性」を非常に重視しているため、ウディアのVGUが難しい仕事になることは明らかでした。4つの型それぞれを区別できるだけの独自性を与える一方で、すべてウディアの型であると感じられる統一感も両立させる必要があったからです。一方で個人的には、それぞれの型が個性的な別のチャンピオンに見えるようなアニメーションにすることで、「今どの型だったっけ?」と迷うことがないようにもしたいとも考えていました。
ウディアは野生動物と深い繋がりを持ちます。各型のアニメーションでもその繋がりを表現したいと考えました。アニメーション制作が一番難しかったのは不死鳥の型で、方向性を見定めるまでに何度も何度もイテレーションを重ねています。
鳥っぽさ、魔法的雰囲気、氷との関連性…組み込むべき要素が多い型でした。加えて野性味も残したかったので、最終的に風で攻撃するというアイデアに行き着きました。
このアイデアは鳥の羽根を擬態するもので、ウディアが腕を振るうと風が巻き起こります。方向性はとても気に入っていたのですが、問題もありました。風の攻撃のサイズが大きく、敵一体ではなく複数体にヒットしそうな印象を与えてしまっていたのです。そしてチームでの議論の結果、型のテーマを風から氷へ移すことに決まり… 私は再びスケッチに戻ることとなりました。
次のアイデアは風の代わりに氷を生み出し、魔法の力で氷を操るというものでした。イテレーション初回時点でのチーム内評価は風攻撃の時よりも高かったものの、こちらは魔法的な雰囲気が強すぎてウディアの持ち味である野性味が失われるという懸念がありました。こうして私は次の課題…魔法の力と野性味のバランスを取ることに取り組むことになります。
その後は氷の物理的な側面を掘り下げてみました。こちらも方向性は気に入っていたのですが、彼と鳥との繋がりが失われたように感じられました。
このため刺突アクションをボツにして、腕を羽根のように振るうアクション(最初の鳥の案がベース)に変更。さらに氷の羽根を残すことで「とあるフレヨルド」の半神へのリスペクトも示しました。結局、最終案はそれまで作ってきたすべてを融合させたものとなっています。実にゲーム開発エピソードらしい結末ですね。この最終案にはチーム一同、とてもワクワクしています。
ウディアは通常攻撃の種類が豊富なので、アニメーションは型ごとに作成する必要がありました。この時も、まずそれぞれの型に独自性をもたせることを意識した上でウディアの個性をしっかりと見つめ、次にスキルの機能について考えるという同様のアプローチを取っています。こうして作った他のアニメーションは次のような感じになっています。
フレヨルドの野獣を覚醒させる
Luis “Riot Bloois” Aguas - ビジュアルエフェクトアーティスト
VGUだ!ウディアだ!ビジュアルエフェクトだ!
ウディアのVGUは僕にとって、LoLのビジュアルエフェクトスタイルを新境地へと推し進めるとても良い機会でした。最初に頭に浮かんだ疑問は「格闘ゲームとLoLどちらにも馴染むウディアを作れるか?」というもの。
格闘ゲームは使用・対戦キャラクターを通じて己の技量を表現できるジャンルであり続けてきました。そしてウディアの新ゲームプレイにも技量を通じた自己表現要素があります。私は見た瞬間に格闘ゲームを思い浮かべたほどです。彼の型にはそれぞれ用途があります。熊の型なら特定チャンピオンとの1v1に強く、不死鳥の型は範囲攻撃が必要な状況で活躍する、といった具合です。
ウディアプレイヤーは状況に応じて最適な型を選ぶもの。つまり、ウディアの上手さはその判断にあるはずです。ウディアは極めて汎用性・柔軟性の高いチャンピオンであり、その点も格闘ゲームにぴったりのタイプだと感じました。
しかし格闘ゲームとLoLは別ジャンルのゲームであり、使われるビジュアルエフェクトの種類もまったく違います。では、そのふたつを融合させるとしたら…?
実例を紹介する前に、まずはウディアの固有スキルの紹介を。新生ウディアは、使用中の型がクールダウン中の時に対象の型を「覚醒」できます。型にはそれぞれ性能/効果が強化された「覚醒」バージョンがあります。
つまり固有スキルで型を覚醒させると力強さが視覚的に示されるわけです。そこで私はLoLと格闘ゲームのビジュアルエフェクトを融合し、明確で、シャープで、エッジの効いたビジュアルエフェクトを通じて「力強さ」の感覚を生み出そうとしました。
しかし初回イテレーション終了後、新しいビジュアルエフェクトスタイルはクールだけれどLoLのスタイルには馴染まないと判断しました。さてどうしよう…?
私は答えを求めて、ウディアの精霊エネルギーに着目しました。こんな力と「繋がった」ウディアは姿になるのだろう?大切な精霊と繋がっている感覚とはどんなものだろう?
そして思案の結果、ビジュアルエフェクトをハッキリとした形状からLoLのビジュアルエフェクトに馴染むソフトなものに変更し、彼の持つイメージをより深く描くように色を重ねてみたのですが… 私はどうしても当初の格闘ゲームデザインが頭から振り払えませんでした。いや、待てよ…作ったものを全部入れて、型の違いは色のみで表現したらどうだろう?
合体ビジュアルエフェクトの模索案
型は4種類あるので、それぞれにカラーパレットを作る必要がありました。その結果がこれです。各型のビジュアルエフェクトは色以外完全に同一のものが使われています。
左:熊の型、右:雄羊の型
このデザインはクールだったのですが、ウディアが強力な状態になったことをまったく示せていませんでした。そこでビジュアルのトーンを抑え、強化された状態がより明確に伝わるように調整を加えました。
ここまでのビジュアルエフェクトはウディアの旧モデルを使って制作していたのですが、この頃にOOYOOがゲーム内確認用のプロキシモデルを完成させ、使えるようにしてくれました。つまり僕もそれ以降は旧モデルを使って「青天井」で案を練るのではなく、新スキルセットに沿ったビジュアルエフェクトを作り始めなければならない、ということです。
そこで私は、新モデルを使った作業を始める前に、ゲームプレイ上「伝えたい情報」に優先度をつけることにしました。例として熊の型を挙げてみましょう。Qキーを押すと3つのことが起きます。
- ウディアが熊の型を取る
- 次の2回の通常攻撃速度が上昇する
- 一定時間、通常攻撃速度が上昇する
スキルによる攻撃速度上昇は「覚醒」固有スキルよりも効果時間が長いため、優先順位を高くする必要があります。しかしそれよりも優先順位が高いのが「ウディアが今どの型を取っているか」という情報です。
LoLで通常攻撃の強化を示す場合、通常はチャンピオンの手にビジュアルエフェクトをつけます。ウディアの熊の型では熊の爪部分に雷のビジュアルエフェクトをつけ、ウディアの通常攻撃に追加効果が付与されていることを示しました。ここで作るべきものは3つ…待機状態の熊の型、覚醒バフ発動時、そして固有スキル「覚醒」効果発生時/バフ中のビジュアルエフェクトです。しかも、各ビジュアルには独自性を持たせつつ、型同士の繋がりも示さなくてはなりません。
さっきの格闘ゲームスタイル模索案が入っているような…?と思った方、ご明察!確かに入っています。シャープな形状と雷テーマをゆるやかにブレンドし、LoLのビジュアルエフェクトスタイルを踏襲しながらウディア独自の表現を作ることができたのです。
その後は敵交戦時のビジュアルエフェクトに取り掛かりました。ウディアの熊の型を「覚醒」させると以後2回の通常攻撃に伝播する雷が付与され、攻撃対象にヒットした後は周囲の敵にも電撃が広がります(どこかで聞いたことがあるような?)。
伝搬する敵が周囲に存在しない場合、雷撃は伝搬せず、代わりに攻撃対象に追加ダメージを与えます。なんだか巨大な雷熊を想起させますね…。
以上、ウディアのビジュアルエフェクト進捗情報でした。なお今回紹介した内容はすべて開発中のものであり、最終バージョンは多少違うものになる可能性があることはご了承ください。皆さんが今回の各種ビジュアルを気に入ってくれることを願いつつ…。実際にプレイしてもらう日が待ち遠しくてたまりません!みんな、ありがとう!
ドラゴンの精霊と繋がる
Justin
“RiotEarp” Albers -
コンセプトアーティスト:ウディアのスキンには、定番といえるほど有名なものがいくつかあります(精霊の守護者など?)。このため開発チームはVGU開発を進める一方でスキンのアイデアを貯め続け…まず最新スキン「龍の啓示」に着手しました。
「龍の啓示」は美しいスキンですし、テーマも素敵です。そこで大筋はそのまま残し、VGUに際して調整が必要になった部分だけを変更することにしました。龍というテーマとその色調も、新生ウディアを表現するのにうってつけでしたしね。
なお模索段階では、今回も色々な方向性に目を向けています。ただし龍をテーマとしたスキンは大量に作ってきた経験からかなり深く理解できていることもあり、今回はそれ以外の側面に目を向けることにしました。当初はドラコニックや龍殺しではなく、「龍の神秘性」をキープすると決定してました。ウディアは「ドラゴンの精霊と繋がって」力を得ているわけですから。しかしここでいくつかの疑問が浮かびます。「龍っぽさ」はどんな見た目か?ウディアは繋がった動物精霊からどの程度物理的な影響を受けるのか?(ウディアに触れる上での永遠の課題です!)などなど…。
今回は龍ではなく人寄りにすると判断していますが、これは彼が召喚した龍の力を制御できていることを示すためです。このスキンであれば鱗や角(絶対映えますよね)などの龍要素もクールですが、一方で腕と肩はしっかりと出し、型とアニメーションをしっかり見せるようにするつもりです。
今後はひとまず基本スキンの細かなディテールを詰めていき、その後ゲーム内への組み込みや、龍の型のコンセプト制作を進めていく予定です。
そしてこちらが、このスキンの目標。モデリング時の参照用に作ったゲーム内の視点と、ウディアの歯並びです。
ウディアのスキンは他にもたくさんあるので、次回の進捗情報もぜひお楽しみに!
この先は?
ご覧いただいた通り、プロジェクトはかなりの進捗を見せており、基本部分は順調に進行していると思います。ただウディアのスキンはかなりの数にのぼる上、型を変えるという特徴もあるので、スキンの改修には平均的チャンピオンよりも時間がかかります。彼にはアルティメットスキンもありますからね。
そういった事情もあり、新生ウディアを皆さんにお届けするまでにはまだまだやるべき事がたくさんあります。今後はチーム一同、リリースまでに彼自身と各スキンをしっかりと作り込んでいきます。もちろん今後のチャンピオンロードマップについても、具体的な情報をお知らせできる段になったらまた公開する予定です。