/dev:夢想家の声
皆さん、こんにちは!私たちはナラティブ、オーディオ、VO(ボイスオーバー)スタッフで、ゲーム内で使用されるフェイの声に命を吹き込む仕事をしています。ライティングからキャスティング、レコーディングなどを経て、チャンピオンが声を得るまでの道のりを、フェイの物憂げな黙想を主題に解説していきます。
制作とキャスティング:フェイを探し求めて
Isa Mari “orkidian” De Leon、ナラティブライター
こんにちは!『リーグ・オブ・レジェンド』のチャンピオンデザインチームのライターを務めているIsaです。ヴァルスのVOアップデート、ジャックスのビジュアルアップデートに伴う新VO、それからもちろんフェイのVOを担当しました!
声に関する作業はチャンピオン開発の初期、キャラクターの背景や性格、目標の概略が決まると始動します。私はキャラクターの要素を掘り下げた資料を作成します。この資料は、制作するチャンピオンについて皆の理解を助けるもので、以下のような内容が含まれています。
- チャンピオンの性格に関する情報一覧と、比較対象となるキャラクターの声のリファレンス(フェイについて短くまとめると、彼は物憂げで感情的、かつ親切な画家です。グレーな倫理観を持つアンチヒーローや、悲劇的で陰鬱な“アニメの男性準主人公”タイプのキャラクターからインスピレーションを得ています)
- 既存のチャンピオンを深掘りし、比較した際にキャラや声が被るリスクの見極め(フェイの声のトーンはジン、ヴィエゴ、アフェリオス、ヨネと被るリスクがありました)
- ボイスラインのサンプル
- 担当声優に渡すキャスティングシート
これをもって、ナラティブ、オーディオ、VO開発者が協力して、チャンピオンのVO制作の旅に出発するのです。
ゲーム内の要素でその協力の例を挙げるとすると、フェイの直線的に進行していくセリフです。フェイには、それぞれ結びつきを持つ独特なセリフの一連があり、一試合の経過に合わせて進行していきます。
「暗い」セリフ パート1 - 初動 | 「僕の心にまとわりついて離れない、暗い何か…」 |
「暗い」セリフ パート2 - Rのスキルレベル1 | 「あの闇が…形を成す」 |
「暗い」セリフ パート3 - Rのスキルレベル2 | 「そうか…これが破壊と絶望」 |
「明るい」セリフ パート1 - 初動 | 「僕の中にある光。見失うわけにはいかない」 |
「明るい」セリフ パート2 - Rのスキルレベル1 | 「僕の光は…輝きを増す」 |
「明るい」セリフ パート3 - Rのスキルレベル2 | 「今なら分かる。芸術を通じた繋がりというものが」 |
「暗い」バージョンと「明るい」バージョンの2つの思考の道筋があり、フェイの葛藤する心と感情の動きを描き出しています。それぞれのセリフは、ゲームの異なる時点で流れます。初動時、最初にアルティメットのスキルレベルが上がったとき、2回目にアルティメットのスキルレベルが上がったときです。そして、これはちょっとした豆知識ですが、敵味方を問わずにジンが同じ試合に参加している場合、各セリフに補足が追加されます。これはフェイの物語で彼が大きな役割を果たしていることを反映しています。
これは私がフェイの性格や物語を、彼を担当するゲームデザイナーとVOデザイナーに提示した後に生まれたアイディアです。ゲームデザイン担当者は、フェイの物語をもっと緊密にゲーム内に反映できるかもしれないという可能性(Myles “Riot Emizery” Salholmに感謝を)に熱狂し、我らが素晴らしきVOデザイナー、Austin “Riot Puma Pet” Mullenがそれを可能にする構成を作り上げてくれました。
フェイをプレイしていると、ランダムでこれらのつながりをもったセリフが流れます(大体1/3の確率です)。ぜひフェイで数試合プレイして、耳をすましてみてください!
Nick “ProfRincewind” Lanza、VOプロデューサー
皆さん、こんにちは!『リーグ・オブ・レジェンド』のVOプロデューサーのNickです。VO作業のスケジュール管理をしたり、キャスティングやレコーディングのプロセスを指導する手伝いをしたり、制作したVOのパフォーマンス面でのクオリティーに目を光らせたりしています。
キャスティングは数週間(時には数か月)にわたって行われます。オーディション音源を送ったり集めたり、提出されたものを精査したり、チームと協力して役に相応しい人材を厳選したりします。
そこから、選出された声優を二次選考のために再度招き、実験的なレコーディングを行います。そこでディレクターと部屋に入ってもらい、チャンピオンの人柄やパフォーマンス、台本について話し合い、彼らがそのチャンピオンに本当に合っているか見当します。
フェイに合った声を見つける際は、弱さのある悲しみを投影でき、それでいてピリピリと塞ぎこんだ感じに豹変することも可能で、時にはそれらをひとつのセリフで同時に表現できる──そんな声優を選ぶ必要がありました。フェイは陰鬱で内省的でなければなりませんが、それでいてリフトで鳴り響く様々な音に埋もれない強さも欲しかったのです。その上、プレイヤーが共感でき、彼が経験してきたことを理解できるような人物でなければなりません。Stephen Fuは素晴らしい演技で、そのすべてを実現してくれました。
役に相応しい声優をチームが選出した後は…
レコーディング(その後レコーディング、そのまた後もレコーディング)
Isa Mari De Leon、ナラティブライター
チャンピオンの台本はいくつものバージョンや草稿、改訂を経て完成します。台本制作の段階は次のようなものです。
- “ラフ”もしくはサンプルの台本:声についてライターが現在どのように理解しているかを検討するためにいくらかセリフを用意し、必要ならばオーディオ面での可能性をテストします(例:1体のチャンピオンに発言者が複数いる場合、歪んでいたり、声にレイヤーが加えられる場合等)。
- オーディション台本:チャンピオンの感情の高ぶりや声域を捉えたセリフを、相応しい人材を選出するために声優に配布します。
- 実験的台本:より長い台本(最終稿の半分ほどの長さ)で声優のパフォーマンスをさらに評価し、洗練するためのものです。個人的にはこれが好きな段階です!声優の声が耳になじみ、それに合わせてどのように台本を書くかを学びます。
- 最終稿:ゲーム内に実装される台本で、あらゆる言語のローカライズでもこの稿が使用されます。
声優はそれぞれのセリフでトーンや気分、抑揚に変化をつけた複数のオプションをレコーディングします。
Nick Lanza、VOプロデューサー
ほとんどのチャンピオンに関しては、最終稿の全台詞を4時間のVOセッション1回でレコーディングし終えるよう目指します。レコーディングセッションには、オーディオ、ナラティブ、VOプロダクションといったチャンピオン制作に取り組んでいるスタッフに加え、ベテランのVOディレクターが1人が参加します。
セッション成功の鍵は、ディレクターが握っています。チャンピオンの声についての私たちのビジョンを実現するために、レコーディング前とその最中に私たちとディレクターで協力します。レコーディング中、私たちのチームがフィードバックやメモ、コンテキストをディレクターに伝え、ディレクターが声優の演技指導にそれを組み込んで最高のパフォーマンスを引き出すのです。
VOディレクターがフェイの声優に、フェイの性格や感情について説明しています。
Austin “Riot Puma Pet” Mullen、VOデザイナー
皆さん、こんにちは。フェイのVOデザイナーのAustinです。最終的にゲーム内に実装される声が、テーマに沿うようにするのが私の仕事です。この仕事には、ボイスフィルターを作ったり、ゲーム内のどの場面で音声が流れたら印象的かを探ったりする作業が多いです。フェイのゲームプレイには、多くのスキルを使用できるというユニークな面があります。感情や気力面での変化をつけるために、うなり声やかけ声をいくつかのグループにまとめて、それらを必要とするスペルに組み合わせるようにしました。レコーディングの際は、強さ、長さ、始まりの子音によって独特のものになる“うなり声”に特別注意を払いました。
レコーディング後、そしてローカリゼーション
Isa Mari De Leon、ナラティブライター
最終レコーディングの直後、ナラティブ、オーディオ、VOプロダクションのスタッフは、録音したものを聞き直して、ゲーム内に実装するテイクを選びます。これが終わったら、チャンピオンの声について私の仕事はほぼ終わりです!ローカリゼーションを担当してくれる仲間にある程度のコンテクストやメモを渡せば、彼らがフェイのセリフを世界中の言語に翻訳してくれます。あとは、エディターや専門領域を横断した協力者の皆でチャンピオンの声をゴール地点まで連れていきます。
Nick Lanza、VOプロデューサー
ローカリゼーションチームは、チャンピオンが世界的に成功するために重要なチームです。彼らは独自にVO制作プロセス(キャスティング、台本の翻訳、レコーディング、ポストプロセッシング)を英語音声の制作よりもずっと短いスケジュールでこなします。それも16言語で!
彼らはそれぞれの地域で、キャラクターについてのビジョンが可能な限り忠実に、かつ刺激的に再現されるように力を尽くしています。そのおかげで、最高のチャンピオンを世界中のプレイヤーに同時にお届けできるのです。