スキンとイベントの現状

アルティメットスキン、レジェンダリースキンのアニメーション、スキンテーマ、イベントなど。

皆さんどうも、パーソナライゼーション&イベント部門のプロダクトリードを務めるBellissimohです。今回は今年初頭に結んだ約束の進捗を振り返りつつ、スキンとイベント(テーマ、アルティメットスキン、イベントパスなど)の現状を私たちがどう考えているかを紹介し、さらに将来的に取り組もうと検討している事項を説明していきます。

スキンの年間リリース数を増やす

2020年初頭に、私たちはスキンの年間リリース数を増していくと約束しました。2019年にリリースできたスキンが100個弱だったので、今年の目標は約120個としています。しかし、この半年間は新型コロナウイルス感染症に多大な影響を受け、それに伴い在宅勤務への大規模な切り替えも実施することになりました。

とはいえ今年の目標であるスキン120個は達成できる見込みで、それどころか2020年末までには目標を超える140個のスキンをリリースできそうな勢いです。

また前回の動画ではリリースするスキンの絶対数を増やすだけでなく、何年も新スキンが出ていない低プレイ率チャンピオンをまとめた長いリストを示した上で、彼らのスキンも制作するとお話ししました。こちらの進捗もおおむね順調で、残りの3体向けスキンも問題なくリリースできそうな状態です。

ゼラス

モルデカイザー

キンドレッド

レク=サイ

ヴェル=コズ

カーサス

サイオン

トゥイッチ

タリック

パンテオン

トランドル

バード

タリヤ

ノーチラス

スカーナー

オーン

また制作が順調に進んでいることから、しばらく新スキンがリリースされていないチャンピオン8体を上記のリストに追加しています。計画通りに進めば、2020年年末までに以下のチャンピオンたちのスキンもリリースできる見込みです。

アニビア

オレリオン・ソル

アジール

イラオイ

アイバーン

シンジド

ヨリック

ザック

この他、直近数ヶ月中にはリー・シンのレジェンダリースキンを含む、高プレイ率チャンピオン向けスキンもリリース予定です。

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稲妻の如き激しさで正義を探求する修行僧リー・シン。嵐龍の棲む山頂を目指す彼が求めるのは龍の祝福。ついに龍との邂逅を果たし、下山した彼は伝説のドラゴンマンサーとなり、世にはびこるあらゆる悪に稲妻の鉄槌を下します。龍の恩寵を受けた彼の目から逃れる術はありません。

スキンの評価指標

まず、エズリアルとアイバーンのスキンを平均販売数で単純比較すると10倍以上の差があるため、私たちはスキンに対する新しい評価指標を見つける必要がありました。そもそも低プレイ率チャンピオンスキンの制作における主目標は、ビジネスを支えることではなく対象チャンピオンを深く愛する熱心なプレイヤー層を支える点にあります。

ではそういったスキンが好評かどうかを測る上で、私たちは何を見ているのでしょう?チームでは主要な指標のひとつとして、メイン(対象チャンピオンを主に使うプレイヤー)の購入率とあまり頻繁に使わないプレイヤーの購入率を比較したデータを用いています。以下のスキン購入率グラフでは、「プレイ率の高いアカウント」がメイン、「プレイ率の低いアカウント」があまり頻繁に使わないプレイヤーを示しています。それでは例として「プールパーティ タリヤ」のグラフを見てみましょう。

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グラフはタリヤメインの約30%がスキンを閲覧・購入したことを示していますが、これはメインのスキン購入率としては近年最高の記録です。一方で「プールパーティ ジャーヴァンⅣ」の評価は、メインだけでなくあまり頻繁に使わないプレイヤーの間でも低調です。ということは、テーマの選択を間違えたのでしょうか?あるいはスプラッシュアートのビジュアルをゲーム内モデルに落とし込むところで失敗したのか?ジャーヴァンⅣをプレイする層にはプールパーティというテーマが訴求しなかった?その答えを正しく理解するには、綿密な調査が必要です。 

  では次に2019年に大きな話題となったスキン、「ダンクマスター アイバーン」のデータを見てみましょう。

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グラフをパッと見て「ああ、メインの多くがスキンを閲覧・購入してくれたみたいだ」と結論づけることも可能でしょう。しかし「もしアイバーンメインが単に新コンテンツに飢えていただけだったら?何年も新スキンが出てなかったから仕方なく購入したけど本当は嫌いだったら?」という疑問も頭に浮かびます。

そういう場合はプレイヤー調査などの手段に目を向け、プレイヤーの振る舞い(スキンの購入や使用)ではなく気持ちを正しく理解するよう努めます。「プレイヤーの皆さんがこのコンテンツに何を感じたか?」を探るわけです。低プレイ率チャンピオンのスキンが上手くできたか否かは、プレイヤーの購入率と気持ちの両方を考慮しなければ判断できません。「ダンクマスター アイバーン」の場合、スキンを心から気に入ってくれたプレイヤーが存在する一方で、多くのアイバーンメインはもっとダークなスキンを求めていることが分かりました。つまりダンクマスター アイバーンは、長いあいだ新スキンを待っていたアイバーンメインの大多数を失望させていたのです。

スキンチームでは、こういった情報を揃えたうえで多様な角度・分野から振り返りを行ない、次回の制作で改善できる点を検証したり、どんな要因ならこのスキンを成功させられたか/どの要因が失敗を決定づけたのかを議論したりします。また、ここで挙がった仮説はすべて以降の新スキン製作時に検証していきます。いつもの「制作・試行錯誤・評価・改善」という終わりのないサイクルの中で。

新規テーマと新生テーマ

私たちにとって、新テーマの開発とは新しい世界を生み出すクリエイティブプロセスです。スキンの販売という商業的意味合いを超えて、手にした皆さんの空想をかき立てるキャラクターや世界を生み出すことを目標としている、とも言えるでしょう。

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チームは2019年に複数の新テーマ制作に着手し、2020年のリリースを目指していました。現時点では「三国武神」、「精霊の花祭り」、「PsyOps」という3つの新テーマをリリースしています。すべての新テーマがヒットするとは思っていませんが、「精霊の花祭り」の反響を見る限り、私たちはついに世界中の皆さんがもっと見たいと思うようなテーマを作るために必要な「何か」をつかめたような気がしています。

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また毎年恒例となっているテーマ、たとえば「王者」テーマなどについても既に取り組みを開始しています。王者スキンは年を追うごとに多くの方に愛されるようになってきていますので、テーマの個性にしっかりと沿いつつも新鮮さと興奮をお届けできるように力を注いでいきます。今年はWorlds 2020イベントのビジュアルを反映したデザインにする予定ですが、このテーマは今後もWorldsというイベント同様に進化を続けていくのでぜひご期待ください。

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スキンチームではこの他にも、2021年リリース予定のスキンや既存シリーズの改装に向けた取り組みにも着手しており、新テーマスキンももう一種類2020年中にリリースする予定です。

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レジェンダリースキン

「レジェンダリースキンのアニメーション」は、2019年に多くの皆さんからフィードバックが寄せられた点のひとつでした。より具体的に言えば、歩行時や待機時のアニメーションの違いがほとんど分からない、というものです。実はそれまで、レジェンダリースキンを制作する場合はチャンピオンの全アニメーションを調整していたのですが、近年はチャンピオンの複雑性が増したため同様の対応をし続けることが困難になってきています。

まず、LoLの長い歴史の中で新チャンピオンに求められるアート品質は急激に上昇し、それに伴い各チャンピオンのアニメーション数も増加し続けてきました。

たとえば、かなり古いチャンピオンであるアムムのアニメーション(スキルセット・エモート・リコール)数は合計16個であるのに対し、より新しいチャンピオンであるセトのアニメーションは159個、アフェリオスは298個と激増しています。

そして2019年、レジェンダリースキン「PROJECTパイク」に着手したチームはスキルセット用アニメーション127個を調整するという難題に直面します。結果的にチームはすべてを完全新規アニメーションとして作らず、かなりの部分でベーススキンのアニメーションを調整して使うことにしたのですが、プレイヤーの皆さんからはアニメーションをもっと明確に違うものにして欲しいというフィードバックが多数寄せられました。この件を通じて私たちが得た最大の教訓は「プレイヤーに違いを認識してもらえないなら、全アニメーションを調整しても意味がない」というものです。こうして私たちは、レジェンダリースキン制作における時間と労力の使い方について方針転換することにしました。

そして「荒野のセナ」。セナは比較的新しいチャンピオンだったためアニメーションは大量でしたが、その品質は高い状態にありました。ここでチームは「巨大な銃が馬に変形してセナがそれに騎乗する」という最高にクールなアイデアを思いつきます。しかしアイデアが良く、馬に乗るというのが「荒野」スキンシリーズの世界設定にピッタリでも、実現するにはかなりの時間が必要になります。開発するとなればプロジェクトで予定しているアニメーション製作期間の大部分を占めるのは明白でした。しかし私たちは全アニメーションに微調整を加えるよりも「銃から馬に変形して乗れる」ほうが、皆さんにとってはずっとインパクトが強いはずだと考え、このアイデアを採用することにしました。皆さんからの反響を見る限り、この判断は正しかったようです。

もちろんこれは「今後は同様の方針に沿って時間割り当てを考えます!」という宣言ではありません。たとえば最近リリースされたアーリとスレッシュ(2体ともリリースがかなり前でアニメーション総数がずっと少ないチャンピオンです)のレジェンダリースキンでは、主要アニメーション全体をしっかりと作り直した上で、変身要素を追加する予算と時間まで確保できています。

以上をまとめると、今後レジェンダリースキンの制作時には「対象チャンピオンのプレイヤーやメインが他のスキンとの違いに気付ける、インパクトのあるものにする」ことに主軸をおいて開発時間を考えることにします。今後も対象チャンピオンごとに、個性をハッキリと表現できるようなアニメーション、そしてVFX/SFX/3Dモデルを提供できるよう最適な時間配分を突き詰めていきます。

アルティメットスキンとスキンのティア

ゲーム内でスキンがチャンピオンの個性を表現するという話題が出たので、続いてはスキンのティア…特にアルティメットスキンについてお話ししてみようと思います。

スキン開発を始める際、対象スキンをどのティアにするのかは頻出議題のひとつです。ここで考慮する事項や要因には主に次のようなものがあります。

  • アイデアをどこまで追求/実現できるか?
  • ベーススキンの音声と対象テーマは相性が良いか?あるいは音声が場違いになるか?
  • 新アニメーションやVFXで活かせるクリエイティブなアイデアには何があるか?
  • 新スキンの柱にする目玉要素やアイデアは何か?
  • 提案されたアイデアを実現するにはどのくらい時間がかかるか?

これを「精霊の花祭りスレッシュ」のケースで振り返ってみましょう。当初、精霊の花祭りスレッシュ向けに挙がっていた案は「戦場で魂を集め続けた結果、人間とデーモンの姿を切り替えられるようになったらどうなる?」というものでした。ここでチームは核となるコンセプトを精査していきましたが、エピックスキンだと時間的制約のためアイデアをきちんと表現しきれないだろうと判断。その後も様々な側面から議論を重ね、最終的にレジェンダリースキンとして制作することで十分な制作期間を確保し、アイデアを具現化することに決定しています。

一方で、アルティメットスキンは提案されたアイデアが、エピックやレジェンダリーティアでのスキンのスケジュール(確保できる開発期間)内に完成させられないほど壮大であることがほとんどです。スキンチームは時々、通常よりもはるかに時間や労力を要するアイデアを生み出すのですが、それが時間と労力に見合うと判断した場合にアルティメットスキンとなるわけです。

とはいえ、アルティメットスキンがしばらくリリースされていないことは皆さんお気づきでしょう。その主たる理由の一つは、「アルティメットスキンには新テクノロジーが入っている」とプレイヤーから期待されている点です。実はチームでもここ数年間、アルティメットスキンに相応しいワクワクするアイデアを多数提案しては精査し続けてきました。チーム全体が興奮するようなアイデアも多数ありました。しかしいずれも既存のテクノロジーを使ったものだったので「アルティメットスキン」にはできなかったのです。

このような経緯があり、私たちは「アルティメットスキンにとって真に重要な要因とは何か?」と自問することになりました。見たことのないテクノロジーや、それを実現するコードの存在?対象チャンピオンだけが持つ個性を深く掘り下げた魅力的な姿を作り出すこと?制作に費やす時間と労力の総量?…議論は続きました。

その結果たどり着いた結論が「本当に特別だとプレイヤーに思ってもらえるのがアルティメットスキンである」というものでした。もちろん新テクノロジーを使うのもひとつの方法ですが、対象チャンピオンならではの体験を没入感と奥深い世界設定を通じて提供できれば、それもまた基準を満たすのではないかと考えたのです。どの方向性で制作に臨んだとしても、アルティメットスキンを企画・制作・リリースするための開発期間は通常よりもずっと長くなります。だからこそ、それだけの労力を注ぎ込んだスキンが最上級のプレイ体験を提供できているか否かが最も重要になります。

“というわけで、年内リリース予定の新たなアルティメットスキンが開発進行中であることをここに発表いたします!”

なお、このスキンには新しいテクノロジーが採用されていますが、これは今後のアルティメットスキルが必ず新テクノロジーを採用することを示すわけではありません。もちろん私たちが表現したい内容を実現するために新テクノロジーが不可欠であれば、今後も新テクノロジーの開発期間をしっかりと取っていくでしょう。しかし今後は、新テクノロジーが不可欠でないならば、最上級のプレイ体験を実現するために別の分野に時間と労力を注ぎ込んでいくつもりです。

イベント

2019年はイベントに対して「品質が時間を追うごとに低下してきている」というフィードバックが多数寄せられました。そこで2020年はプレイヤー全体にとって満足感を得られ、新規性があり、思い出に残るイベントを目指しました。

また年始には「主要イベントでは必ずゲームモードを提供する」とお約束しましたが、こちらは現在PsyOpsイベントに合わせてオープン中の「ワン・フォー・オール」を含め、現在のところ順調に達成できています。なお、ゲームモードの方針については今年中に詳細な記事を公開する予定です。

今年はこの他にも、ゲーム外でお気に入りチャンピオンと対話し、彼らの物語を深く体験するしくみ「精霊の契り」も制作しました。キンドレッドと狼さんのことをもっとよく知れたのが良かったのか、あるいはカシオペアに全身の骨を砕かれることを(密やかに)願う体験が好評だったのかは分かりませんが、おかげさまで「精霊の契り」は大いに好評を博しています。

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とにかく本イベントには想像以上の反響をいただきました。「精霊の花祭り」はLoLチーム全体が本当に多大な労力を注ぎ込んだイベントだったので、チーム一同大変喜んでいます。ただ多くのプレイヤーの方が同様のイベントを希望されていることは重々承知していますが、実はこのイベントの準備には丸一年という期間がかかっている上、LoL開発チームのみならず他タイトル(レジェンド・オブ・ルーンテラなど)の開発チームまで巻き込むものだったので、これほど大規模なイベントを「毎回」実施することはできません。ただ、複数タイトルを巻き込む同規模イベントをもう一度実施するための取り組みには既に着手しているので、詳細情報が揃うまでしばらくお待ちください。

総括すると、今年はみなさんがLoLイベントに求める期待の水準を高めることができたのではないかと考えています。今後も皆さんの期待を上回っていけるよう努めますが、通常イベントを毎回「精霊の花祭り」規模で実施できない点はご了承いただければ幸いです。

イベントパス

LoLのゲーム内コンテンツ入手方法とプレイヤーの関係性を考える時、イベントパスの重要性はここ数年で高まり続けています。各種プレステージスキンの入手できる方法となっている部分は、その最たるものでしょう。私たちはプレステージスキンの入手難易度を「やりがいある形」で高めたいと考えていましたが、一方でプレステージスキンを入手したらそれ以外のコンテンツが入手できない、あるいはそれ以外のアイテムが魅力的でない状態になることは避けたいとも考えていました(手に入れたいコンテンツが他にも存在する場合もありますから)。しかし現在のトークンシステムでは何を入手するにしても同一リソース(トークン)を消費するため、必然的に最初はプレステージスキンのトークンを貯め、スキン入手後にそれ以外のコンテンツが入手できたらラッキー、という流れになってしまいます。

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このように現在の構造では総合的なイベント体験を改善していくのが困難であったため、来年からは各イベントでコンテンツを入手する方法に対して大規模な調整を加える予定です。現時点での目標はシステムをよりシンプルにし、ガイド機能を強化した満足感の高い体験をお届けすることです。もちろん、「入手するコンテンツを自分で選べる」という自由を完全に排除することは避けますのでご安心ください。

終わりに

以上、「スキンとイベントの現状」でした。次回は来年初旬、内容は2020年の今後の取り組みに対する自己評価、皆さんからのフィードバックに対する考察、そして来年の目標と計画になる予定です。

2020年もまだまだ新コンテンツが控えていますのでお楽しみに。今年は大変な年になりましたが、皆さんの熱気、情熱、そしてフィードバックのおかげでチーム一同は気力充実、明日は今日よりもいい仕事ができると感じて日々開発に臨めています。いつも本当にありがとうございます。